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日本周産期・新生児医学会
新生児蘇生法普及事業 事務局
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Q & A

    Q10. 蘇生の初期処置を必要とするか、ルーチンケアでいいのかを判断する出生直後のチェックポイント項目から『胎便による羊水混濁の有無』が外されました。早産児でなく、呼吸に問題がなく、筋緊張も良好な場合、羊水混濁があってもルーチンケアに進んでいいのでしょうか?

    • A10. 
      たとえ、胎便による羊水混濁があったとしても、その他の状況に問題がなければ、ルーチンケアに進みます。ただ、気道開通には十分気をつける必要があります。

    Q11. ルーチンケアは『母親のそばで』とありますが、カンガルーケアのことでしょうか?

    • A11. 
      この『母親のそばで』は、今回の改訂で新たに加わった項目ですが、ルーチンケアを行う際に、母親と別室ではなく母親が児の様子を感じられる場所で行うことを推奨しています。カンガルーケアも、児の状態が安定していればスタッフの慎重な監視の元で、行っても支障ありません。

    Q12. 胎便による羊水混濁の確認はいつ、どのように行えばいいのでしょうか?

    • A12. 
      初期蘇生が必要となった場合、気道確保を行い、その後に気道開通のための処置を行いますが、その際に、分泌物の性状の一つとして胎便の有無の確認を行うことになります。

    Q13. 胎便による羊水混濁があった場合の処置はどのようにするのでしょうか?

    • A13. 
      気道開通の際に胎便を認めた場合は、2005年版の時と同じようにやや太めの吸引カテーテルを使用して、口腔内、鼻腔内の順で吸引を行います。その際に、胎便が多い、児の反応が悪いなど、必要と思えば2005年版で行っていた気管内吸引を実施しても構いません。

    Q14. 胎便による羊水混濁がある場合、気管内吸引してはいけないのでしょうか?

    • A14.
      「胎便による羊水混濁があって、活気がある場合には気管内吸引はするべきではない」ということはConsensus2005と同じです。
      Consensus2010では「胎便による羊水混濁があって、活気が無くても、ルーチンには必要なし」となりましたが、気管内吸引をしてはいけないと言うことではありません。
      気管内吸引に習熟している術者の場合は、蘇生の初期処置の気道開通の一環として胎便の気管内吸引を実施しても結構です。
      しかし従来のように呼吸をしていなくて心拍がどんどん落ちているのに気管吸引を続けると言うことは避けた方が良いでしょう。

    Q15. パルスオキシメータは、いつ装着すれば良いでしょうか?

    • A15. 
      初期蘇生を始めてからの30秒経過したところで、呼吸、心拍数の評価に進みますが、その時に『自発呼吸なし、あるいは心拍数100回/分未満』、『自発呼吸あり、且つ心拍数100回/分以上だが、努力呼吸かつチアノーゼあり』の場合に、パルスオキシメータの装着を考慮することになっています。
       しかし、現実的には初期蘇生に進んだ場合には、すでにその時に、パルスオキシメータの装着を考慮し準備をしておく、もしくは、人手があればなるべく早く装着しておくほうが安全でしょう。

    Q16. パルスオキシメータのプローベは、どこに装着すれば良いでしょうか?

    • A16. 
      出生直後は動脈管の影響を受けることがあります。呼吸状態を最も反映する右手に装着することが推奨されています。

    Q17. パルスオキシメータは常に右手に装着しなくていけないのでしょうか?

    • A17. 
      蘇生時には右手を原則としてください。ただし、状態が安定してきた場合、右手ではなく下肢などにプローベを付け替えても構いません。

    Q18. パルスオキシメータ装着後、値が表示されるまでのギャップがありますが、その間はどうしますか?

    • A18.
      『自発呼吸あり、且つ心拍数100回/分以上』あれば慌てることはありません。
      その上で『努力呼吸且つチアノーゼあり』の場合には、CPAPあるいは酸素投与を検討します。
      努力呼吸がない場合は、例え中心性チアノーゼが顕著であってもSpO2の値が数値目標以下であることが明らかになるまで、酸素投与は控えます。

    Q19. パルスオキシメータを装着した際の、数値目標はありますか?

    • A19. 
      コンセンサス2010の日本版には「数値目標」がありません。
      しかし、NCPR2010版テキストのアルゴリズム図には数値目標が記載されます。これは、出生後1分、3分、5分、10分に酸素投与を行うべき最低数値目標で、それぞれ、60%、70%、80%、90%となります。
      また、酸素投与を行っている場合は、95%を超えた時点で酸素投与を中止ないしは投与濃度を減少することとされています。

    Q20. パルスオキシメータの使用が推奨されることにより、酸素投与が制限されますが、逆に児が低酸素状態にさらされる危険はないのでしょうか?

    • A20.
      パルスオキシメータの装着から数値が正確に表示されるまで時間がかかりますし、不慣れな場合にうまく装着できない場合も考えられます。
      心拍が100回/分を下回ったり、無呼吸ならば人工呼吸を開始しますし、肉眼的に明らかに皮膚色が悪く、努力呼吸の兆候(陥没呼吸・呻吟・多呼吸など)があったら、低酸素状態である可能性がありますので、CPAP,酸素投与を考慮してください。
      ただし、パルスオキシメータの数値が正確に出るようになった時点で、酸素投与の必要性を再評価してください。

    Q21. 初期蘇生を始めてからの30秒経過したところで、呼吸と心拍数の評価に進み、『自発呼吸あり、かつ、心拍数100回/分以上だが、努力呼吸かつチアノーゼあり』の場合に、CPAPあるいは酸素投与を検討とされていますが、適応基準はありますか?

    • A21. 
      もし、努力呼吸症状が強い場合、空気によるCPAPを行える施設、技量があれば速やかに処置を考えましょう。
      空気によるCPAPを行うことができない施設の場合で酸素投与を考える場合は、心拍数が100回/分以上であることが確実ならば、まずパルスオキシメータの装着、その数値を確認することを考えましょう。
      今回の改訂で皮膚色が評価から外された背景には、心拍数が100回/分以上で自発呼吸があれば、それだけで児にはまだ予備力があるとの考え方があります。

    Q22. CPAPを行う際に、目標圧はありますか?

    • A22.
      NCPR2010版テキストには記載されますが、CPAPの目標圧設定は5-6cmH2Oとなります。また、圧損傷を避けるためにも8cmH2Oを超えないようにした方が安全でしょう。

    Q23. 人工呼吸を開始する際に、ブレンダー、圧縮空気の配管がありません。空気で人工呼吸を行うにはどのようにしたらいいでしょうか?

    • A23. 
      今まで、流量膨脹式バックを使用していた施設では、空気配管がないと空気での人工呼吸ができなくなります。
      できましたら、自己膨張式バックの購入をお勧めします。

    Q24. 自己膨張式バックを使用する際に、酸素チューブの接続、リザーバーの使用はどうなるのでしょうか?

    • A24. 
      コンセンサス2010では正期産や正期産近くの児で人工呼吸を開始するときは空気の使用を推奨しています。
      それで心拍数やSpO2の改善が見られない場合や早産児では低濃度の酸素投与から開始します。
      自己膨張式バックではリザーバーが無ければ酸素チューブを介して100%酸素を流しても実際には高濃度酸素になりません。
       高濃度酸素を投与したいときはリザーバーを接続する必要があります。

    Q25. 蘇生後のケアのなかで、中等度から高度の低酸素性虚血性脳症に対しては低体温療法を考慮するとありますがどのように行うのでしょうか?

    • A25. 
      低体温療法は、どの施設でもできるような簡単な治療ではありません。
      十分な設備、人員、知識、経験のある地域の中心的施設で、国際標準のプロトコールに則って行うべきものです。
      まずは、地域で中心的施設とどのような連携をもち行っていくかを協議することから始めましょう。